つきすみわたる世

日々の記録

2022年5月に読んだ本

小針由起隆『ローマが風景になったとき 西欧近代風景画の誕生』

17世紀のローマ近郊と風景スケッチを背景に、風景画がアトリエから戸外で制作されるようになるという変化を論じた一冊。西洋美術史と風景画への興味から手に取った一冊でした。

これは大学図書館で借りた本ですが、返却期限を大幅に過ぎたためメールで怒られました。ごめんなさい。

ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』

国家の行く末を決めるのは、ずばり制度。「収奪的制度」の礎が作られて以来そこから抜け出せない国、「収奪的制度」から「包括的制度」への転換を果たして成長した国……様々な例を挙げながら制度の在り方が国を左右することについて論じた本。一読しただけで知見を深められた気がするけれど、メモを取りながら丁寧に読み返したい。

日本についても触れられていましたが、読んでいると「うちの国、大丈夫か……?」と不安になってきました。政治への興味は失いたくないよー。

佐藤亜紀『小説のストラテジー

芸術は作り手と受け手との闘争……というような内容がはじめの章にあったような。受け手は作品という名の作り手からの挑戦に応えなければならない、という。どちらの立場にあるとしても読んで無駄ではない考察でした。

パトリック・モディアノ『失われた時のカフェで』

中心にいるのは一人の女性、彼女について複数の男性が、そして彼女自身が語っていく形式の小説。人々の人生に横断的に現れながら、最後は誰の前からも去っていくヒロインの姿が印象的でした。

解説で翻訳者の方が張り切っていましたが、あまりに長かったので飛ばしました。本国フランスではかなり人気の作家なのだとか。

ジーン・ウルフ『ナイト Ⅰ』

久しぶりの王道ファンタジーだ!と思って読み始めたら、なんだか入り込めなくて中断しました。異世界に迷い込んだ主人公の適応力がやたらと高いし、なぜか偉そうな態度になっていくし、無駄にモテるし、まあ合わないものもあるということですね。

オスカー・ワイルドサロメウィンダミア卿夫人の扇』

『ドリアン・グレイの肖像』『獄中記』しか読んだことのなかったワイルド。戯曲は初めて読んだワイルド。こんな面白いもの書いてたの!?とびっくりしました。『ドリアン・グレイの肖像』だって面白く、というか興味深く読んだのだけど、娯楽的な面白さは『まじめが肝心』が断トツです。言葉遊びも皮肉も効いていていかにもワイルドらしいうえ、勘違いやすれ違いが交錯する様も見応え抜群。戯曲は言葉の美しさ楽しさを味わう傾向にありましたが、内容にぐんぐん引き込まれたのは初めてです。ワイルドすごい。これは人におすすめしたい!楽しい読書でした。