- サラ・ウォーターズ『半身』
- 津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』
- 加賀野井秀一『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』
- アリス・マンロー『小説のように』
- 山田昌弘『結婚不要社会』
- トマス・ハリス『羊たちの沈黙』
- 室城秀之訳注『落窪物語』
- 東雅夫編『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇』
- エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』
- ちくま日本文学『泉鏡花』
サラ・ウォーターズ『半身』
サラ・ウォーターズ『半身』読み終わった。すごい小説を読んだ
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月5日
主人公のマーガレットは鬱屈した生活を送る貴婦人。慰問のため訪れた監獄で、霊媒師だという囚人シライナと出会う。慰問を繰り返すうち、マーガレットはシライナに魅了されていくが……。
主にマーガレットの日記という形式を取っているため自分まで一緒にシライナに魅せられていってしまい、ラストで大きな衝撃を受けました。息を呑んで展開を見守っていただけにショックでしたね。やられた!の感覚を味わえて楽しかったです。
舞台はヴィクトリア朝のイギリス。メインの語り手であるマーガレットは抑圧を感じて生きているので、全体的に重苦しい雰囲気の小説です。慕っていた父は亡くなり、想いを寄せていた女性は弟の妻になり、窮屈な家庭で母と過ごす日々。さらに慰問先は不気味な監獄なので、明るさにはかなり欠けます。元気で時間があるときに一気読みするのがいいかな。
津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』
津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』読み終わった
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月7日
タイトルは作中にそのまま出てくるフレーズなのだけど、そこの文章がすごくいい
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月7日
日本のありふれた大学生が主人公という、私が読むにしては珍しい設定の小説。これがまた良かった。ノイズのない読みやすい語り口で、主人公の日常とその裏に見え隠れする悲しみや愛情が描かれます。性暴力を受けた過去を持つ人物が登場しますが、その経緯を語る主人公の心情が非常に優しく心強く、私も励まされました。読んで良かった。これがデビュー作ってすごい。
加賀野井秀一『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』
加賀野井秀一『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部』読み終わった。「そもそも見ようとする営みそのもの、ひいては科学知そのものが、私たちのどのような欲望に支えられているのか」について探っていく一冊。けっこうショッキングな図版が頭に残る
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月12日
「見る」ことの奥底に潜む欲望とは。"猟奇的"な絵画、蝋人形、解剖標本などが次々に出てきては、科学や知の名の下に人の内側(文字通りの内側)を暴く行為、その源泉に私たちを誘っていきます。図版は白黒で量もそこそこですが、中にはけっこう衝撃的なものもあるので注意。死臭や薬品の香りがする本です。あまり触れてこなかったジャンルなだけに興味深く読みました。
アリス・マンロー『小説のように』
アリス・マンロー『小説のように』読み終わった。忘れかけていた自分の中のあまり明るくない感情がいろいろ暴かれた気分。『子供の遊び』が特にそうだった。マーリーンとシャーリーンの残酷さがかつての自分と重なる。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月16日
初めて読む作家の短編集。解説いわく、「厄介なことを抱えながらもそれぞれの人生を懸命に生きる人々の姿を余計な感傷や思い入れを排してリアルに描き出す」。ツイートした通り『子供の遊び』という一篇にとりわけ心を揺さぶられましたが、なによりも最後の『あまりに幸せ』が素晴らしく、いい読後感でした。各話のタイトルも原文、邦訳ともに好きです。
山田昌弘『結婚不要社会』
山田昌弘『結婚不要社会』読み終わった
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月17日
全体的にさらっと読んじゃったな…自分が思ってるより結婚ってトピックに興味がなかったし、読んで興味が刺激されるわけでもなかった
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月17日
あっさり読んでしまったこともあり、記憶が曖昧です。人々の経済事情は変わったけれど結婚への感覚は変わっていない(うろ覚え)こと、社会にとっての結婚と個人にとっての結婚の食い違いなど、面白く読めた部分もありました。
トマス・ハリス『羊たちの沈黙』
いったい何がいけなかったのか、読んでも目がすべるばかりでかなり最初のほうで脱落しました。FBIという男性社会でのクラリスの居心地の悪さや苦労を偲ばせる描写のせいか……ネタバレを見てひゃーと思って終わりました。いつか読めるかな。
室城秀之訳注『落窪物語』
室城秀之訳注『落窪物語』上巻を読み終わった。中将の継母たちへのしかえしがけっこう激しくて逆襲されないか心配になる
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月20日
下巻も読み終わった
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月21日
継母に虐待されている姫君を慕う頼もしい侍女の活躍がよかった。後半になると全然出てこなくなって寂しかったな
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月21日
姫君を救うヒーロー道頼の復讐がなかなか酷。継母だけじゃなくその娘たちまで巻き込まれるので…ピンポイントに復讐するのは難しいか…四の君がとばっちり喰らいすぎてた。面白の駒の描写は生き生きしててよかったけども
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月21日
ふと古典を読みたくなって本棚を探ってみたら、奥からいつ買ったか思い出せない『落窪物語』が出てきました。継母にひどく当たられている姫君を左大臣の息子の道頼が見初め、継母一家への復讐を果たしながら幸せになるお話。コミカルで生き生きとした人物の描写が多く、かなり読みやすかったです。
一方で道頼が画策する継母への復讐がなかなかで驚きました。無理やり牛車をどかさせて石を投げたり、お寺の部屋を奪ったり、召使に悪口を言いに行かせたり、召使たちを煽って蹴らせたり、自分の妹と結婚させることで継母の三女の夫を奪ったり、継母の四女との縁談が持ち上がったとき、自分と偽って間抜けな替え玉と結婚させたり。平安時代の貴族、思ってたより野蛮。一通り仕返しが終わったら今度はひたすら尽くして仲良くなります。
私が特に好きなのは物語の前半で活躍する姫君の侍女あこきです。幼いときから姫君に仕え、道頼が姫君にアプローチをかけたときには姫君の幸せのために尽力します。道頼が屋敷に泊まったときにも張り切ってお世話していて、姫君が幸せになれたのはまずこのあこきがいたからです。あこきは亡くなった姫君の母から、姫君の助けになるようにという願いを込めて「後見」という名前をいただいています。名に恥じない立派な働きをするあこきが物語の第二の主人公と言っても過言ではありません。
史実・フィクション問わず、平安女性貴族の主従タッグといえば中宮定子と清少納言が浮かびますが、姫君とあこきも好きです。わがままを言うなら、あこきが姫君を深く慕う理由にもっと説得力がほしかったかも。
そしてもっとわがままを言うなら、姫君が道頼に引き取られた以降の展開でもたくさん登場してほしかった。出世したのはわかったけど寂しかった……。
東雅夫編『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇』
東雅夫編『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇』読み終わった。鏡花が主催・参加した怪談会の記事や座談会に着想を得て書かれた作品を収録。鏡花という作家をますます生き生きと感じられた
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月26日
怪談会とは、参加者が集まって一人ずつ幽霊譚や不思議な体験を披露していく会のこと。大規模なものになると料亭を貸し切って廊下や部屋にしかけを作って、とノリノリで楽しんでいたようです。柳田國男や芥川龍之介なども参加しており、当時いかに怖い話が流行っていたかがうかがえます。
記事の中で鏡花の様子も触れられていましたが、あまり積極的に話そうとせず聞き役にまわる辺りが奥ゆかしいです。鏡花のイメージぴったり。ますます親しみが湧きました。
エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』
エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』読み終わった。ダークな想像力が迸る短編が20収められていて読み応えがある。表題作がいちばん好きかも。語り口も淡々としていて読みやすかった。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月29日
友人がツイートしていたのを見て気になっていた一冊。初めに収められている表題作からしてグロテスクでエロティックですが、けっして煽情的でない語りのおかげですらすら読み進められました。こういうのが好きそうな人が身近に何人か思い浮かびます。『庭園列車』の発想も面白かったです。
ちくま日本文学『泉鏡花』
ちくま日本文学『泉鏡花』読み終わった。未読の作品を読めて満足
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2022年6月30日
鏡花の文章って、どうしてこんなに読んでいて心地がいいのか……。