つきすみわたる世

日々の記録

2022年9月に読んだ本

ジャネット・スケスリン・チャールズ『あの図書館の彼女たち』

1939年のパリ。二十歳のオディールはアメリカ図書館で司書の職を得て、愛する本に囲まれて働き始めます。一方、1983年のモンタナ州フロイドでは、13歳の少女リリーが謎めいた隣人オディールと友人になりました。故郷に帰らず、家族や友人からの手紙も受け取らず、一人で暮らすオディールの人生に何があったのか。物語を読み進めるうちにオディールが秘めていた友情、愛、そして勇敢さが明らかにされていきます。

主人公のオディールを初めとして、戦時下であっても図書館の役割を果たそうとする職員たちの姿に胸をつかれました。館長のミス・リーダーや理事のクララ・ド・シャンブラン伯爵夫人。ナチスがパリを占領しユダヤ人の図書館への出入りを禁じても、本を求める人々に応えて家まで本を届けに行くことにしました。小説を執筆中のコーエン教授は家から書物を没収されますが、彼女のためにいくつも本が提供されもしました。苦境にあっても本の力を信じる姿によって、まるで私まで励まされたような気分です。

 

W・H・マシューズ『迷宮と迷路の文化史』

きっかけは娘の素朴な疑問。「誰が最初に迷路を作ったの?」それに答えるべく、思想・宗教・文学・芸術の資料を渉猟し筆者は迷宮という表象の迷宮へ踏み入ります。調べ甲斐のありそうなテーマでとても面白く読めました。

 

ロバート・ソログッド『マーロー殺人クラブ』

ミステリを読み慣れた人なら、トリック自体はそう難しいものではないかもしれません。けれど主人公ジュディスが持つ明るさと不意に見せる暗さが彼女の過去への好奇心をかき立てます。それに、型通りの主婦と目立たないおばあちゃんたちが殺人事件を解決する物語の中心になっているというだけで私には読む価値がありました。