つきすみわたる世

日々の記録

2023年2月に読んだ本

スティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』

 

いちばん好きなのは、映画館に迷い込んで目にした光景が語られる『青いカーテンの向こうで』でしょうか。激しい雨の描写が冴える『雨』もお気に入りです。読み応えのある一冊でした。

 

豊田園子『女性なるものをめぐって 深層心理学と女性のこころ』

 

女性が自分らしく、創造性を発揮して生きるためには何が必要か。この本はその問いかけから始まります。問題は長らく続く男性中心の社会によって、女性の本来持っていた大切なちからや知恵が無視されてきてしまい、女性たち自身が本質を見失ってしまっていること。筆者はその取り戻すべきものを「女性的なスピリチュアリティ」と名付け、ユング心理学の観点から、その重要性や取り戻し方について語ります。

心理学のことをよく知らない私としては、スピリチュアリティという言葉への馴染みのなさや超越的なちからや知恵を女性的なものと男性的なものに分けることへの違和感のせいで、初めはうまく呑み込めませんでした。ですがこの本が筆者自身の実感や心理分析に訪れた女性たちの経験に根差して書かれたことが分かると、他でもない私のためにもなる本だと思わせられました。性別と自分らしさで悩むことのある人にはぜひ読んでもらいたい本です。

 

中川成美・村田裕和[編]『革命芸術プロレタリア文化運動』

 

よく知らない分野であっても論文を読むというのは楽しいですね。

 

オルナ・ドーナト『母親になって後悔してる』

 

著者のインタビューに応えた女性たちが母になった理由からは、「女性は母になるもの」という社会通念が彼女たちに刷り込まれていたことが窺えました。国は違えど状況は同じなようです。「子供はほしくない」と言ったら「そのうちほしくなるよ」と言われたこと、将来の計画に出産を含めなかったら「子供を持つのはいつ?」と尋ねられたことを思い出します。

本書のタイトルを過激だ、ショッキングだというコメントがネット上で散見され、内容を読まないままに批判的な目を向けているのではと思える反応もありました。それだけで、「母親になって後悔してる」という気持ちが表に出にくいかが分かります。そして、母親という役割に期待されているものの圧の強さも。

 

伊藤博明『ルネサンスの神秘思想』

 

また自分の理解を超える本を読んでしまいました。人物の名前がたくさん出てきてやや混乱したのも一因です。特に占星術の説明は読んでもちんぷんかんぷんでした。