- ケネス・モリス『ダフォディルの花 ケネス・モリス幻想小説集』
- Catherine McCormack『名画を見上げる 美しき天井画・天井装飾の世界』
- 井上寿一『理想だらけの戦時下日本』
- 南川高志・井上文則 編『生き方と感情の歴史学 古代ギリシア・ローマ世界の深層を求めて』
- 井辻朱美『パルメランの夢』
- 中野美代子『契丹伝奇集』
- 山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品選』
ケネス・モリス『ダフォディルの花 ケネス・モリス幻想小説集』
ケネス・モリス『ダフォディルの花 ケネス・モリス幻想小説集』読み終わった。詩的かつ音楽的な文体で綴られる29篇の物語をたっぷり読めた。神話、伝説、さらには音楽を下敷きにした物語が多く、壮大なスケール感に酔うのが楽しい。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月5日
まるで美しい音楽をそのまま文章にしたような、読みながらうっとりしてしまう不思議な本でした。題材は洋の東西を問わず取られており、おとぎ話でお馴染みの妖精の物語や桃源郷を見つける話などは、読んでいると童心に帰ったかのよう。モリスは神智学者でもあったようですが、それらしい魂の成長をテーマにした話が多かったと思います。
森や谷、湖など自然の描写がずば抜けて美しいのも見どころです。
Catherine McCormack『名画を見上げる 美しき天井画・天井装飾の世界』
Catherine MaCcormack『名画を見上げる 美しき天井画・天井装飾の世界』読み終わった。教会に寺院、宮殿、市庁舎や議事堂まで。絵画の技法を駆使して、神話や聖書のモチーフを取り入れながら描かれた、頭上に広がる壮麗な芸術が紹介される。個人的にはイスラムの抽象的な装飾が好き。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月6日
天井画といえば、ミケランジェロが手がけたシスティーナ礼拝堂の「最後の審判」がすぐに思い浮かびます。本書では、見上げることによって鑑賞できる名画・名装飾の数々を紹介。神の世界を表現するために、自らを神格化するために、理念や理想を表すために……様々な目的で作られた芸術であっても、図版だけではっとするほどの華麗さを持っているのはすべてに共通していました。
井上寿一『理想だらけの戦時下日本』
井上寿一『理想だらけの戦時下日本』読み終わった。日中戦争下と現代社会(本が書かれたのは2013年)の大衆心理には類似点があると指摘し、戦時下における官製運動「国民精神総動員運動」を分析する。筆者の最終的な結論は2023年の今も非常に重要なもの。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月10日
国民の一致団結を目指し精神的な部分に訴えかけようとしても、それは非常に難しい。大衆のコントロールしがたさがわかる箇所はなぜだか読んでて楽しかった。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月10日
戦争の勝利のために、全国民の心をひとつにすべく計画された国民精神総動員運動。様々な理想が掲げられたものの、国民の反応は? そこから見えてくる、現代社会が目指すべき形とは?
10年前に書かれた本ではありますが、筆者による結論は今も重要かつまだまだ改善の余地のあるものでした。また、「ぜいたくは敵だ!」など、有名なフレーズのもと画一的なイメージしかなかった戦時下の様子を詳しく知ることもできました。歴史についてはつい外国のものばかり読んでしまいがちですが、自国のことについても知識を深めたいと思います。
南川高志・井上文則 編『生き方と感情の歴史学 古代ギリシア・ローマ世界の深層を求めて』
南川高志・井上文則 編『生き方と感情の歴史学 古代ギリシア・ローマ世界の深層を求めて』読んだ。古代ギリシアとローマの世界への理解を深めるため、当時の人々の生き方と様々な感情に注目した論稿集。特に恥を扱った論が興味深かった。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月13日
彼らが感じた恥について、商人の生き方について、友情の語り方について。時も場所も大きく隔たった古代ローマ、古代ギリシアの人々が身近に思えてくる論集でした。
井辻朱美『パルメランの夢』
井辻朱美『パルメランの夢』読み終わった。将棋さしと科学者の幽霊が体の中にいる自動人形パルメランと、世界中をめぐる遍歴帽子屋の旅を描いたファンタジー。世界でいちばん好きな類のお話。こういうお話しか読めなくなってもいいってくらい好き。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月15日
メリーゴーラウンドに乗って百回と一回まわると行ける国って、いったいどうやってそんなすてきな発想ができるんですか
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月15日
想像力を刺激する、美しいファンタジーのオムニバスでした。幻想的な遊園地と鉱物、鱗に覆われた竜と猫の巡礼者たちなど魅力的なイメージでいっぱいの本です。子供のころに読んでいたらどれだけ影響されていたか分かりません。古本屋さんで探してみようと思います。
中野美代子『契丹伝奇集』
中野美代子『契丹伝奇集』読み終わった。中国やアラビアなどの国々を舞台に繰り広げられる幻想的な物語が収められている。曜変天目に翻弄されるタイムトラベルものが特に好き。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月20日
翻訳や評論なども手がけているらしい方の短編集でした。異国情緒あふれる舞台設定、過去と現代を行き来する不思議さ、美しい茶器をめぐる陰謀など、『曜変』は特に読んでいて楽しかったです。
山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品選』
山尾悠子『夢の遠近法 初期作品選』読み終わった。硬い文章も突飛な発想も好み。印象的な表現がいくつも出てきて、こういう言葉の使い方もありなのかと発見が多かった。
— あおのすけ (@auk_eon_so) 2023年4月28日
圧倒的な筆力と語彙で、不可思議な世界に実在感を与えてしまう。この作者は、そんなことができる稀有な作家です。ありえない世界に説得力を持たせるためにはこれだけの文章が書けなければいけないのか……と自分の力不足を痛感させられもしましたが、楽しさと同時に学びも得られた読書でした。
この方の本は引き続き読んでいくつもりです。