つきすみわたる世

日々の記録

2022年10月に読んだ本

吉本隆明『定本 言語にとって美とはなにか』Ⅰ・Ⅱ

大学で受講した日本近代文学の授業で、先生がおすすめしていたので読みました。難しかった……。興味のあるテーマだったので読破しましたが、内容の理解度には自信がありません。それでもなるほどと納得できるところはちょっとだけありました。再読リスト入りの著作です。

 

キム・ハナ/ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』

誰かと一緒に暮らそう。そう考えたふたりが選んだのは、W²C⁴(女性ふたり猫四匹)からなる分子家族の形態。似ているところがたくさん見つかって意気投合したふたりは、違うところもたくさん見つけながら家族になります。決まった暮らし方にこだわらなくていい、誰かを尊重し誰かに尊重されることは素晴らしいと教えてくれる本書は、この頃まさに人との生き方を考える機会が増えた私に貴重な学びを与えてくれました。

 

ロミ『自殺の歴史』

命令されて毒薬を呷ったり、主君や配偶者の死に従ったり、恋に破れて苦しんだ挙句に死を選んだり。フランスでの事例を中心に、あらゆる「自身で命を絶つ行為」のエピソードが次から次へと語られます。テーマは重苦しく思えますが、うっかりミスで失敗した例も紹介されていたり、筆者の皮肉やユーモアの混ざる文章のおかげで読み進められました。

 

奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアへ行く』

敬愛する恩師との交流、多彩なバックグラウンドを持つ学友たちとの出会い、ほとばしる知的好奇心に突き動かされた青春の記録。留学生の立場からかいま見た国家や国家間の闇を描いたもの。文学とは何のためにあるかを探るエッセイ。

これほどに多くの面があり、どの面から見ても完成度の高い本にはなかなか出会えません。瑞々しい学問の日々を追っていたと思えば、そこに重くのしかかる強権的な国家の黒い面影が見え隠れします。そこから導き出される、文学の大切な役割とは。学びへの旺盛な意欲と豊かな感受性を持つ人でなければ書けない一冊でした。